グループ財務戦略
「稼ぐ力(資本効率の向上)」を支える
グローバル資金管理
高度化支援サービス

「マルチバンク」×「SaaS」の財務基盤構築をベースに
国内・海外すべての拠点の資金情報をリアルタイムに可視化し、
グループ全体での財務業務の標準化・効率化をご支援します

資金は企業活動のための重要な経営資源の1つであり、資金の有効活用や資金ショートリスクへの対応は対処すべき経営課題です。日本企業においては2000年代から日本国内における銀行CMS(キャッシュマネジメントシステム)の導入や2010年代における海外へのCMS展開も進み、一定の成果をあげているものの、欧米企業に比べれば、対策を十分にとれているとはまだ言い切れないのが現状です。
国内外での大型買収やCOVID-19や金融危機など不測の事態に迅速に対応するためにグループ資金をタイムリーに把握し、必要に応じて機動的に動かすことができるような体制整備は、今後ますます重要になってくることが想定されます。ディーバでは、グループ全体での財務業務最適化を目指し、専門部隊によるグローバル財務プラットフォームとなるTMS(トレジャリーマネジメントシステム)の導入支援から業務フローの統一(標準化)、業務効率化および効率化後の業務安定化までトータルのご支援をいたします。

こんな方におすすめ(取り組みテーマ一例)

  • 1資金流動性の
    管理・最適化

  • 2Excelから脱却した資金予測
    (ショート管理)の効率化

  • 3外国為替(FX)の通貨リスク・
    エクスポージャー管理

  • 4有利子負債の圧縮
    (グループファイナンス)

  • 5支払利息の削減
    (ネッティング)

  • 6SWIFTを活用した
    不正抑止・ガバナンス強化

  • 7ERP連携を見据えた
    財務領域のDX化

  • 8財務業務のSSC
    (シェアードサービスセンター)化

TMSとは

TMSはグループ全体を巻き込んだ資金管理業務・財務活動のプラットフォームとなる仕組みです。
TMSを利用することにより、本社はスプレッドシートに転記された過去の情報を利用するのではなく、グループ全体の詳細情報をリアルタイムかつオンラインで、TMS上で把握することが可能になります。TMS上で為替、金利、商品先物、ネッティング、支払代行などに関するグローバルオペレーションのすべてを詳細にリアルタイムかつオンラインで把握できます。

TMS概念図

グローバル財務の高度化ステップイメージ

特長・メリット

01グループガバナンス(牽制機能)の強化

各社の資金の動きを掌握し、資金調達の必要性とその使途を判断し、「見られている」ことによる不正の抑止、投資計画、資金ショート管理の厳正な運用を可能にします。

02資金流動性の最適化

グローバル全拠点の銀行口座情報をリアルタイムでTMSに集約し、眠っている資金を削減します。適切な流動性を維持しながら投資原資を最大化させることが可能です。

03為替リスクのヘッジ

商流中に日本本社や統括会社を経由して売買をすることで資金の流れと為替リスクを集中化し、日本本社や統括会社が一括してTMS上で為替ヘッジを実施します。

04支払業務の効率化

会計システム上の支払指示データをTMSに連携し、TMS上で支払承認をリモートで行い、各金融機関に支払指図を自動連携することが可能となります。また、グループ間支払についてはネッティングを行うことで支払業務自体の削減と銀行手数料の削減も可能となります。

導入実績

よくあるご質問

グローバルキャッシュマネジメントをする意義について教えてください。

グローバルキャッシュマネジメントを行うことで得られる効果は一般に以下のことが言われています。

1.資金の見える化

これにより、世界各地に散らばっているグループ全社各社の資金の状況を本社財務部でリアルタイムに把握することが可能になり、全体の資金計画の作成含め各種施策の実施が可能となります。

2.金利収入の増加(支払金利の減少)

グループ全体で資金の融通を行うことにより当座貸越の利息の支払もなくなり、各社の当座口座に残っていた利息の付かない資金を本社へ集中の上運用または利息の付く口座に回すことで金利収入が増加します。

3.総資産の圧縮

これまで各社で銀行借入をしていた部分について、グループ内の余剰資金を貸付ける形にすることができるようになります。そのため、外部借入(負債)と余剰資金(資産)が両建てで解消し総資産が圧縮され、その結果として各種財務指標が改善します。

4.グループ本社でコントロールできる資金量が増える

上記の結果、グループ本社でグループ全体の資金がコントロールできるようになるため、新たな外部借り入れを行わずとも自社グループ内の資金のやりくりによって扱える資金量が増やせ、成長に向けた積極的な資金活用が可能となります。

5.子会社の業務負担の軽減

今まで各子会社で詳細に行っていた各社の資金残高の管理とそれに伴う調達業務について、不足すればグループ本社から資金供給がされるスキームとなるため、子会社側では銀行との折衝や、資金ショートにならないかのシミュレーションなどの業務を子会社側で行うことが必要なくなり、結果としての残高は気にせず、将来の資金の増減情報のみを気にすればよくなります。

6.各種リスク管理の高度化

グローバルな営業活動を行う企業の財務部では、資金ショートリスク以外にも、信用枠管理、金利リスク、為替リスク、ポートフォリオ管理、ヘッジリスク等の業務の実施が必要です。それらに対応するにはグローバルなキャッシュマネジメントが必要となります。

上記の効果が得られなかったとしても、すぐさまグループ全体が瀕死の状態になるというものではもちろんありません。しかしながら、確実に改善の余地があり、取り組めば財務面からビジネス全体を支え、効率化により、グループ全体の競争力が向上することは間違いありません。

オフライン情報収集から、トレジャリーマネジメントシステム(TMS)への移行メリットはありますか。

こちらは、「情報」というものにどのような価値を見出すかという話となります。スプレッドシートベースのオフライン業務の場合、何かしらの情報が集まっては来るものの、ビジネス上の戦略的な意思決定に必要な信頼性・完全性と網羅性のある情報が集まってくることはありません。 TMSを利用すればこれらの情報が瞬時に100%の正確性を担保した状態で提供されます。 もはや、既に集計結果が手元に届くころには古い情報となってしまった月次ベースのデータに頼る必要はなくなり、フレキシブルなレポート機能を元に関心に応じた今後のビジネスの予測のシミュレーションが可能になります。このようなビジネスに不可欠な情報の価値を金銭的価値で評価するのはとても困難ですが、この情報を提供できるのがディーバの提供価値です。

Excel・ERPとトレジャリーマネジメントシステム(TMS)の違いを教えてください。

Excelは財務部で一番使われているシステムで、悪い点は何もなく、複雑な計算処理には欠かせません。しかしながら、Excelは複雑な処理プロセスや、内部統制、他のシステムとの連携を主目的として設計されておらず、それらの目的の達成のためには多次元のデータベースが必要となります。Excelは数値が登録されなければ何も始まりません。TMSはデータベースを用いて複雑な処理プロセスが実現できるように設計されたアプリケーションです。ERPやTMSとともに利用する場合においては、Excelはとても素晴らしい補完的なツールなのですが、もし、Excelのみに完全に依存している場合には、効率性・信頼性・プロセスの最適化・データの可用性に関する問題を内在していると言えます。

次に、ERPと比較します。ERPとの違いはERPの正式名称である「Enterprise Resource Planning」という言葉が明確な違いを示しています。ERPは調達から販売までのプロダクトチェーン全体を取り扱います。ERPにおけるトレジャリーの果たすべき役割は、将来を見据えたボラティリティに対するヘッジの実施や、安全で信頼性の高い処理プロセスを構築することであり、その結果がERPにも反映されます。ファイナンス業務がERPでカバーされている場合、トレジャリー業務の活動結果はERPで計算される財務諸表として表現されます。 しかしながら、ERPはトレジャリーの業務向けに開発されているものでもなく、トレジャリー業務はERPシステムのために行っているものではありません。 確かに、ERPでトレジャリー業務の一部実施することは可能ですが、それは決して効率的ではありません。

世界中のグループ会社を持ちビジネスを行っている会社にとって、TMSは本当に最適なソリューションです。しかし一般的にはTMSは高価で、さらに導入作業が難しく、トレジャリー担当およびシステム担当の両方のかなりのリソースを必要とすると考えられてきました。近年のSaaSソリューションでは、月額15万円以下で利用可能になってきています。SWIFT接続が必要な少々規模の大きい場合でも月額30万円程度で利用が可能です。ERPを導入する場合はこれよりコストもかかり時間もかかります。さらに、大規模なシステム導入となると、各子会社の管理者に協力してもらうために本社CFOのコミットメントが必要になり、プロジェクト自体のハードルも高くなるため、早期に業務効率化を図ることが困難となります。

トレジャリー業務改革はどこから着手するのがよいのでしょうか。

ディーバでは、以下の流れで進めていくことをご説明しております。

1.置かれているビジネス環境に合わせたトレジャリーの戦略目標を決定する

戦略目標を基にトレジャリー業務で達成すべき事項と紐ついたシステム要求を定義する必要があります。その達成すべき事項によって最適なシステムが異なるためです。

2.今現在および将来のグループ全体の業務の複雑さを理解する

その実施に当たっては、腕利きのコンサルタントや、以前対応したことのある経験者でないと難しいと考えるかもしれません。しかしながら、グループのために何をすべきなのか、何がグループのためによいことなのかを一番よくわかっているのはお客様自身です。私たちは今まで数々のソリューションの導入の話を伺ってきましたが、その大半はコンサルタントの経験則によって構築された国や会社をまたいだ複雑な構造のシステムとなってしまっていました。ディーバではトレジャリーシステムを統合することを推奨しています。つまり、トレジャリー業務では複数の別々のシステムを使う必要はありません。システム統合プロジェクトをすればよいのです。

3.最良のベンダーを選定するための効果的なRFP(Request for Proposal)プロセスを実施する

自社のビジネスを一番よく理解しているのは間違いなくお客様自身ですが、どのソリューションが最も効果的なのかというところまでは通常理解できていることは稀です。したがって、RFPプロセスにおいては細かい機能面の確認をするのではなく、一般的な問題の解決策を確認する必要があります。具体的には、FAXの自動送信機能はWEBベースのシステムには必要のないものですので、「FAXの自動送信機能はありますか」と聞くのではなく、「どのような方法で各種情報をグループ全体にいきわたらせるのか」というように聞く必要があります。さらに、プロから高い評価を受けているパートナー会社の中から、長期にわたって付き合えるようなパートナーを選定する必要があります。具体的には支払に関連する機能の導入はシンプルかつ短期間で簡単に行えますというような会社は避けてください。確実に悪夢のようなプロジェクトになってしまいます。なぜなら、支払に関連する機能はどの会社にとっても実現可能で必要なものではありますが、シンプルで簡単なものでは決してないからです。

今ではTMSはもはや高価なものではなくグローバルで活動する企業すべてにとって必須のものであり、TMSを導入することのインパクトとメリットはとてつもなく大きいものです。

トレジャリー業務改革でよく出てくる改善ポイントについて教えてください。

1.複数銀行を跨ぐ支払承認の一元化

トレジャリーマネジメントシステム(TMS)を利用すれば、各銀行のインターネットバンキングを利用する必要は無くなります。各銀行のインターネットバンキングにアクセスしそれぞれの銀行によってポリシーの異なるパスワードを使用し、場合によっては専用のハードウェアを利用してログオンをする必要がなくなります。TMSでは国や地域を跨いだ各銀行とのネットワーク接続が可能でこれによりTMSの画面のみで支払の承認フローを回すことが可能となり、いたってシンプルなものとなります。これにより、使い勝手がよいうえに、グループ全体での支払プロセスに関してのセキュリティコンプライアンスの強化が実現されます。

2.データ入力の二度手間の回避

トレジャリー業務をしていると様々なツールを利用することがあります。ツールは業務負荷を改善するために採用されているのですが、同じデータを別のツールに登録するなどの二度手間、三度手間が発生し、かえって非効率が発生し、繰返業務を余儀なくされることがあります。データ入力の二度手間がなく、一度システムに登録されたデータはそのシステムの別の箇所でも再度利用が可能なものがよいシステムといえます。

3.メールや紙ベースの煩雑な申請および確認業務からの解放

本社は、頻繁に子会社への貸付や子会社の代理で取引を行いますが、これらの申請および確認などは通常メールや郵便で行われるためその管理自体がとても煩雑になります。TMSを利用すればTMS内で当該業務フローの状況を一元管理することができ、無駄で複雑かつ時代遅れの業務から開放されます。また、その結果ネッティングや支払代行といったより効果の高い取り組みを行うための基礎ともなります。

4.グループ全体の日次ベースの財務状況の把握

正確な意思決定やマネジメントには財務状況の情報は欠かせません。親会社だけではなく子会社含む関係者全員が各社の財務状況を確認できなければ、投資および資金調達に際して効果的な意思決定はできません。一度リアルタイムかつグループ全体の財務状況の情報を手に入れると、それがない状況は考えられなくなります。

5.トレジャリー業務に特化した専用システム

大企業を中心に、ERPシステムに代表される統合されたシステムの有用性が理解されつつありますが、特殊で重要な業務に対しては専用のシステムが利用されます。資金管理・リスク管理・ネッティング等をカバーするTMSはトレジャリー業務に必要なデータを扱えるのはもちろんのこと、関連する会計処理についても効率化します。銀行との情報連携をもっとも高度化しようとする場合にはTMSを利用することが一番有効な方法になります。

6.グループ内債権債務の確実な実行

グループ内取引においては未照合の債権債務があると一部の会社にとっては不公平な借換えとなるうえに、最終的にはグループ全体の問題にも発展します。支払をしなかった会社が利益を享受する一方で支払いを受けなかった側は予定外の追加手数料などが発生してしまいます。利息の問題のみならず、通貨リスクの管理が複雑になるなどの問題も発生します。グループ全体を網羅した照合機能を持つシンプルなネッティングシステムが実現されているTMSを利用することでこのような諸問題から解放され、本来時間を割くべき問題へ集中することができるようになります。

7.Excelスプレッドシート

トレジャリー業務をする際にExcelスプレッドシートを全く使わないということは通常あり得ません。また、Excelスプレッドシートはデータベースを利用した処理プロセスを代替するというものでもありません。例えば、個人的な分析や評価等の特定の業務においては明らかに効率的で安全な場合もあります。ExcelスプレッドシートはTMSを利用する場合でも補完的なツールとしてなくてはならないものです。

8.効果的なグループ間でのネッティングプロセス

効果的なグループ間でのネッティング機能を利用すればグループ内の取引について各社間の期限・合計金額・未決済残高等について認識の不一致が大幅に削減され、業務の効率化を図ることが出来ます。

財務情報を見える化するためには、どのような手順が必要になりますか。

1.銀行システムおよびSWIFTからの口座情報を取得

導入期間にお客様のご要件に応じてSWIFT経由またはHost-to-Host接続等を用いて 各銀行との情報接続インターフェイスを構築します。当該インターフェイスは通常サービスとして提供され、お客様に銀行と接続するための物理的なハードウェアの保有やその保守をしていただく必要はありません。貴社のシステム担当の方の関与はほぼ必要ありません。一度連携設定が完了すれば、毎日リアルタイムで世界中の銀行取引明細書を受信可能になり、これにより簡単に口座残高の見える化の基礎が構築されます。スプレッドシートでの運用では毎日収集は現実的ではありません。直接銀行の口座の情報を取得することで、子会社に負荷が増えることなく最新のデータが入手可能です。

2.口座残高の確認の実施(システム的なチェック)

トレジャリーマネジメントシステム(TMS)内の明細の積み上げ残高と、銀行から送られてくる残高の整合性をチェックすることが可能です。

3.子会社口座を含む全社口座残高の確認および通貨換算(通貨別、国・地域別、個社別)の実施

口座残高情報は柔軟性の高いレポートを個社カスタマイズする形でご用意致します。

例:銀行口座一覧
例:地域グループ別残高一覧

このような形で、各社のまさに現在の情報をリアルタイムで見れるようになることで、精度の高い資金管理の基盤となる見える化が実現されています。

ネッティングを活用すべき理由について教えてください。

1.照合業務は何よりも効果的である

グループ財務管理業務でグループ間債権債務取引の照合業務ほど効果的で有効なものはありません。効果的なネッティングシステムでは決済プロセス内にグループ間債権債務の照合プロセスが包含されてるものです。これにより単なる決済のためだけではなく、あらゆるグループ会社間の照合に関する問題を解決することが可能になります。

2.子会社のモチベーションが向上する

子会社間の決済にあたって不一致が発生した場合、会社規模のより小さな会社の話はなかなか聞いてもらえません。また、マーケティング予算の配分等を含んだ基本的な傾向として、規模の小さな子会社の発言力は相対的に小さいのが常です。効果的なネッティングプロセスでは、全ての子会社に必要な発言力を与えることができた上にそれをきちんと調整の上統合することができるようになっているため、子会社にもメリットがあるのです。

3.公正な再融資が実現する

仮に、グループ会社間の支払が予定通り実行されなかったとしても、外部への支払とは異なり大きな問題になることはあまりありません。また、そもそも子会社が未払いの取引を解消しない場合に、グループ全体の資金流動性を低めることにはなるものの、子会社側には不利益がほとんどないためそのまま放置され、実際は簡易的な再融資となってしまっています。つまり、子会社間のキャッシュフローの流れを確実に把握することで、外部からの必要以上の借入をなくし、利払いを減少させるのが本社財務担当の仕事ですが、本社財務部は通常子会社間の取引実行に介入することは事実上できないため、外部資金の再調達コストが発生する結果、利益が減少し、流動性も悪化し最終的には無駄なお金が発生してしまいます。きちんとグループ間取引の照合プロセスを実施すればこれらのことは容易に解決が可能です。

4.資金管理の信頼性が向上する

資金管理で最も難しいのは入金予測です。しかし、ネッティングセンターは支払期日及び、実際に支払うのかまたは貸借として扱うのか等の全てのことを把握しているため、ネッティングを行うことで入金の不確実性が解消されます。これにより本当に入金されるかどうかということを悩む必要がなくなり、ネッティング実行日にはいつでも必ず入金が保証されます。

5.外貨取引管理の信頼性が向上するため

取引遅延や実行時期が曖昧なグループ内取引に関連する外貨スワップ取引があると、余計な仕事に加えてコストも発生してしまいます。取引遅延が長引き、他のヘッジとポジションが混ざってくればくるほど、取引の履歴を追い、再計算を実行するのが大変になります。このような事象が発生してしまうのは、グループ会社間の支払は期日通り行われなくても当事者間では問題が発生しないからです。そこで、ネッティングを活用すればグループ間の支払の遅延自体が発生しなくなるので、このような余計なスワップやヘッジの対応に手間をかける必要が無くなります。

6.外貨取引リスクが一元管理される

現地通貨以外を扱うグループ会社は外貨取引に対する十分な知識とスキルを最低限持ち合わせている必要がありますが、なかなか無いのが実情です。そこでネッティングを活用することで、各会社での実際の外貨での請求業務などは一切変更することなく、外貨取引に関するリスクを各子会社からネッティングセンターへ移管し、ネッティングセンターの外貨取引のエキスパートに外貨取引リスク管理を一元管理させることが有効な対応策となります。

7.自発的な照合合意プロセスが活用できる

ネッティングプロセスにおいて、債権側を優先として照合を行った際に債務側は債権側の決定に従わなければいけなくなります。これは、債務側を優先として照合を行った場合でも同様です。つまり、どちらかを優先とすると反対側は従わなければいけなくなります。これとは違うネッティングの考え方として「相互の確認に基づくネッティング法」というものがあります。この方法では、それぞれの取引内容について両者にて内容の確認を行い決済される際には合意が完了していることになります。もし合意できない部分がある場合には、その経緯と理由が記録され、ネッティングセンターにて確認することが可能になり、理由に応じてネッティングセンターにて対処することができます。もはや子会社にプレッシャーを与えて照合を行わせる必要はなく、自発的に合意がとられるようになるのです。

8.導入が簡単である

ネッティングの導入は複雑なソフトウェアの導入などとは異なり、皆にとってメリットのあるものです。技術的な負荷は低く一過性のもので、ユーザへのトレーニングも各種方法により効率的に実施可能です。どうしてもリソースが足りない場合などについては、必要に応じてシステムのホスティングサービスや業務のアウトソーシングのオプションも利用可能となっております。

9.本当に経済合理性が高い

ネッティングによりグループ会社間の債権債務の照合作業が効率化されれば、各会社において、それぞれ毎月2人日程度の効率化ができることが想定されます。子会社が35社あれば月に70人日で約3.5人月が毎月効率化できる計算になります。そして各社の担当者は報酬レベルが低くないのが通常ですので、キャッシュマネジメントや為替関連の効率化を含まないネッティングに関する部分のみで月額約180万円~240万円、年間では約2,000万円~2,800万円程度の金額に相当します。

10.連結決算作業も効率化される

ネッティングプロセスが適切に導入された場合、グループ会社間でやり取りされる全ての請求書がネッティングシステム内で共有されることになり、国外の送金に対して規制があるような会社に対してさえ照合プロセスのあらゆる部分でよい影響を及ぼします。つまり、債権債務の情報はこまめに各会社間で照合され、未照合の債権債務が残らず、各社間で合意がとられたうえで決済がされるので、認識の不一致が発生する可能性が無くなります。これにより、連結決算の債権債務照合業務についても効率化され、各社にもメリットが生まれるため、各社が進んでネッティング業務に取り組むようになります。

マルチラテラルネッティングとは、その知られざる効果とは。

マルチラテラルネッティングとは、3者以上でのネッティングもしくはネッティングセンターのような決済代行機関を設けて実施するネッティングのことを意味します。
マルチラテラルネッティングは、グループ内部の支払の最適化および全体パフォーマンスの最適化のための手法であるものの、最も過小評価されていますが、知られざる効果もあります。

多くの企業は資金の最適化のみならず会社全体の資金関連の管理業務にも非常に役立つということを認識できておらず、そのため潜在的な各種問題を認識できない状況にあります。ネッティングプロセスを適切に設計することにより、グループのどこに改善の余地があるのかを特定し、債権管理を最適化することが可能になります。

具体的には、マルチラテラルネッティングをすることで、会社間の取引ボリュームの過多とは関係なく、主にグループ会社間の請求書の数を減少させるメリットがあります。また銀行の取引手数料削減についても効果的です。

会社間のネッティング業務はビジネスの一連の業務プロセスの債権債務の決済というたった一部分にすぎないのですが、個々の業務を最適化させることで、一連の業務プロセス全体への最適化までも実現することが可能なのです。グループ会社間での取引関係においては、片方が債権をもちもう片方が債務を持つことになります。会計上はその債権債務の金額は一致する必要があるのですが、以下のような5つの理由により通常はなかなか一致しません。多くの企業では照合不一致の解消のための対策として自動照合のソリューションを選択しているのですが、以下の最初の2点についてのみしか解消できず、残りの3点については手落ちとなってしまいます。

  • 請求書が未達
  • 請求書通り処理されていない
  • 請求手続きに問題がある
  • 請求書の金額が誤っている
  • 合意した金額と異なる等々

また、グループ全社での会社・相手会社コードの統一が仮にできたとしても、請求書の記載内容の正確性が担保できるわけではないので、請求書を受け取る人に負荷がかかることには変わりありません。もしお互いの認識している残高金額が一致しており、一方の会社としては、他方に確認することがないと思っていても、相手の会社が伝えたいことが何もないとは限らないため、業務効率化のためにまだまだできることがあります。高度に最適化されたネッティングプロセスの場合、相互の会社がなぜ相互の認識相違があり、その調整の結果なぜ合意に至ったのかについてコメントを残せるようになっており、このことには以下の数々のメリットがあります。

  • 両者ともに当事者意識を持って解決にあたることができる
  • 誤りが皆に明らかになるので、グループ全体のことを考慮し適切に修正される
  • 親会社の知らない照合処理や会計処理が無くなる
  • 実際の照合業務は時間がかからず実施でき、全体のグループ会社間の請求業務が自動化し最適化される
  • 請求書が送付/受領されたか、またはどのシステムから発行されたかということは関係なくなり、所在の国にかかわらずグループ全社に対してネッティングプロセスの適用が可能になる

これにより、少なくとも各会社で毎月1-2人日の削減が可能になり、10社あれば少なくとも毎月10人日、50社あれば毎月50人日の削減効果となるのです。これは銀行手数料削減分を除いた部分の効果です。慢性的なリソース不足でお悩みの方は、マルチラテラルネッティングの導入をご検討ください。

資金管理のグローバル展開を実現させるために、重要となる観点について教えてください。

資金管理をグローバルで展開する場合、世界に散在する子会社の数が多いと、システムで取り扱うべき情報の管理の複雑性が増すため、難易度が高いものになります。Excelや紙ベースでこのようなグループ全体のデータを管理しようと思うとすぐに限界に達し、各社が何かしらのシステムで電子的にデータを管理していたとしても、個別バラバラのシステムで管理されている状況ではそれを統一的・一元的に管理するというのはほぼ困難です。そのため、本社財務部にとって各社のローカルなキャッシュマネジメントシステムの概要を理解することはとても重要なことになります。

1.グループ全社を一つのプラットフォームへ統合

グローバル全体でキャッシュマネジメントの統制を取ろうとすると、グループ本社に閉じたものではなく、関係する各社が一堂にアクセスすることのできるトレジャリープラットフォームが必要になります。そもそも企業は、規模の大小にかかわらず支払指示を銀行に送ったり、取引内容を銀行から取得したりする業務が必ず発生し、このことが一つのシステム内にすべてのデータを集中させるというコンセプトのポイントとなっています。支払指示の承認権限から資金予測の概要までを含む一連の資金管理の業務プロセスはグローバル全体で統合されていることが理想の姿です。統合プロセスが始まると、キャッシュマネジメントは徐々にローカルでの導入作業からグローバル全体でのソリューションの実行へと変遷してゆき、すべてのグループ会社の一つのプラットフォームへの統合が完了すると、グループ全体のキャッシュフロー情報がいつでもアクセス可能で、透明性の高いものとなります。グループ全体のキャッシュフロー情報がわかるということは、中国やブラジルなどの規制国の会社も含むすべての会社のキャッシュインとキャッシュアウトの予定情報がわかる状態となります。最終的には、このプラットフォームに各子会社の利用している銀行をも接続させることで、国内およびクロスボーダーの資金のやり取りが可能になります。

全ての取引銀行との接続が統合されることによって得られるメリットには下記のようなものがあります。

  • 子会社向けの独自のソリューションではなく、他の会社との共通のソリューションであること。
  • 本社財務部と余計なメールのやりとりが不要になること。
  • 報告業務に時間を割く必要がなくなること。

上記に加えて、署名権限や、現状の口座情報および銀行との関係性がガラス張りになります。
本社財務部はもはや子会社から銀行口座情報を収集する必要はなくなり、個々の銀行毎の慣習的な承認権限プロセスを利用する必要が無くなります。本社財務部に業務を集約化させなくても、本社財務部はいつでも好きな時に全ての情報をリアルタイムに確認可能で、グループ全体の資金状況とプロセス状況を完全に把握できるようになります

2.新しい協働のかたち

キャッシュマネジメントシステムが一元化され統合されると、グループ各社間のコラボレーションのあり方が変わり、業務の改善が進んでゆきます。2社間のみのバイラテラルネッティングであればまだしも、3社以上にまたがるグローバルレベルでのマルチラテラルネッティングの際にはこのような仕組みがないと複雑すぎて対応ができません。

3.進化したグローバルでの会社間照合

ネッティングをすることにより、銀行への支払手数料の削減のメリットがあり、グループ会社数の多い場合にはその効果は特に顕著に現れます。また、ネッティングによる資金手当も新しい手段として実行できるようになります。さらに、ネッティングはグループ全体の通貨リスクに対してもとても有効で、通貨リスクの除去や少なくとも緩和に役立ち、結果として時間と労力を節約できます。内部取引照合業務自体の効率化・最適化が実現されるため、グループ間の取引量の少ない会社にとってもメリットがあります。これらのメリットは、グループ全社が同一のトレジャリープラットフォームを利用する際は特に大きなものとなります。

グローバルで展開されるキャッシュマネジメントシステムはマルチラテラルネッティング以外にも多くのポテンシャルを秘めています。

4.WEBベースのトレジャリーネットワーク

トレジャリー業務をグローバルで対応しようとする場合には、それに適したシステムが必要で、具体的にはWEBベースのネットワークソリューションであるかどうかが重要となります。それは、以前は偉大な技術革新とみなされていたのですが、今日では当たり前のものとなっています。ネットワークソリューションを活用することで、国境の枠を超えてグループ全体の状況を把握することが可能になるのです。

5.トレジャリー業務にとってクラウドは新しいテクノロジー以上の意味がある

WEBベースのシステムをモバイルデバイス経由で利用するいわゆる「クラウド」を利用する場合には、データの管理とコンプライアンスの点で真価を発揮しますが、もちろん業務プロセスにおいてもメリットが多数あります。グループ各社と様々なデータを共有することで、各担当者、各部署、各本部は自分が今まさに必要とする情報を、クラウド情報共通のデータストアから入手でき、それをそのまま自分の業務処理に利用することができるようになります。もはや、電話、メール、FAXなどを大量に利用した複雑な方法での各社への情報のばらまきは不要で、必要な情報は全てクラウドから入手可能なのです。資金管理に関連する全ての担当者が、データの収集・出力・編集業務という日々のルーティン業務から解放され他の業務に時間を割けるようになり、最終的にはキャッシュマネジメント業務自身がグループ全体のトレジャリー業務を統合するプロセスとなるのです。このプロセスは業務内容がそれぞれ異なる様々な組織の担当者が関連するのですが、WEBベースのソリューションを利用することでこのプロセスの統合と最適化が実現可能となるのです。

6.全ての業務プロセスの統合化

「クラウドでのトレジャリー業務」というのは新しいコンセプトではないのですが、企業財務のグローバル化に伴い広く注目を集めており、今日では各関係者を結びつけることができるようなトレジャリーシステムが求められています。関係各社のローカルなオペレーションでは、必要な限り詳細に各種業務を進めることが必要であるため、各々の業務が一斉に同時に実行されるのですが、これによりトレジャリーシステムに関係する人が増え、よりデータの精度が上がりグループ全体の資金管理の高度化とつながっていきます。WEBベースのトレジャリーシステムにより世界各国にいる担当者とタスクを平準化し、全体の利益に貢献することができるようになります。トレジャリーシステムをグローバル全体に展開したい場合には、関係する会社全部にとってメリットがあるような業務負荷の分散を行うようにグループ全体の業務プロセスを見直す必要があります。キャッシュマネジメントがグローバルになるということは、グループ全体での関係者が親密にコラボレーションをすることで、本社財務部の負荷を分散したうえでなおかつ、セキュリティの向上と財務の透明性を高めるということなのです。

資料請求・お問い合わせはこちら